《 第3章 紫苑 内なる思い 前編 》

初夏の陽だまりの中、紫苑はページをめくるたびに心が少し満ちていくのを感じていた。
——外の光が、やわらかい内側の光へと変わり始める季節。

図書館で働く27歳の紫苑は、本を愛する静かな女性。

初夏の賑やかな空気に少し息苦しさを感じながらも、
公園で本を読む時間に安らぎを見出している。

人付き合いは少し苦手だが、
自分のペースで過ごす日常が心地よい。

—— 夜、家に帰るとお風呂に入り、
ベビードールに着替えて読書をすることで、
一日の思考と疲れを静かにほどいていく物語。

物語を読む

私の名前は、紫苑。
二十七歳。
市立図書館の職員。

性格は、おとなしいと、よく言われる。
でも、あまり実感はない。

なぜなら本のことなら、
つい、熱くなってしまう。

図書館の受付にいると、
どこに、どんな本があるか、
だいたいすぐに分かる。

「おすすめは?」と聞かれたら、
迷わず、いくつか名前が浮かぶ。

それくらい、
本は、私の生活の中にある。

5月は、少し苦手。

初夏の空気に誘われて、
外が、途端に騒がしくなる。

陽気な声が、
窓の外から聞こえて、
少し、息苦しさを感じる。

それでも、暖かくなった公園のベンチで、

本を読めるのは、
少し、うれしい。

5月になると、
毎年、同じ本を読み返す。

何度読んでも、
公園のベンチで、また読みたくなる。

たぶん、これが、私の5月病。

お昼は、いつもお弁当を作って、
食堂で食べている。

みんなと、
おしゃべりしながら食べるのは、
少し、苦手。

一人で、
本を読みながら食べるほうが、落ち着く。

ご飯は、だいたい自分で作る。

お弁当も、毎朝作って、持っていく。

今日のおかずは、
卵焼きと、ほうれん草のおひたし。

それと、昨日の残りの煮物。

食堂の隅の席で、
本を開いて、静かに食べる。

それが、いちばん落ち着く。

今日は、同じ職員の人が、
向かいに座ってきた。

「いつも一人だけど、たまには一緒に食べようよ」

そう言って、にっこり笑う。

私も、にっこり笑って、
「うん」と答える。

でも、口元が、少しだけ、
ひきつっているのが分かった。

やっぱり、人と話すのは、
少し、苦手かもしれない。

家に帰ると、お風呂に入って、
外の空気を、洗い落とす。

ぬるま湯に浸かりながら、
短い小説を読む。

谷崎潤一郎の、
何度も読み返している話。

お風呂から上がると、
いつも、ベビードールに着替える。

ふんわりとした肌触りに、
体の力が、少し抜ける。

家の中では、
だいたい、この格好。

もっと動きやすい部屋着もあるけれど、
結局、これに戻ってくる。

今日の終わりには、
ベッドで横になりながら、
昨日の続きの本を読む。

あしたも、
いつも通り、 図書館へ行けそうだ。

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紫苑がお風呂上りに着替えたベビードール。

フリルが胸元をやさしく包むパープルカラーのベビードールを着用したモデルの正面スタイル

Quiet Violet Babydoll

思考をほどく紫

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